鉄リサイクルの仕組み

鉄スクラップの発生と収集

現在市中スクラップは年間約2,630万トン(2022年度)が回収され、リサイクルされていますが、その発生量は鉄鋼蓄積量と大きく関係しています。鉄鋼蓄積量とは、日本国内で使用され、現在何らかの形で国内に残っている鉄の総量のことで、その形態はビルや橋などの建築物や自動車、家電製品からカミソリの刃までさまざまです。現在の鉄鋼蓄積量は14億1千万トンを越えており(2021年度)、さらに増加し続けています。これまで鉄スクラップの発生量は鉄鋼蓄積量の約2~3%で推移しており、鉄鋼蓄積量の増加とともに鉄スクラップの発生も増加が見込まれています。
これらスクラップの収集の形態はさまざまですが、専門の回収業者が集荷したり、建物や自動車などの解体業者が鉄以外の付着物や部品をある程度まで取り除いたものを、スクラップ加工業者で加工するのが一般的です。

各処理プロセスの紹介

ギロチンシャー:処理プロセス

大型構造物を的確に切断、高処理能力で安定供給

シュレッダー:処理プロセス

高純度・高比重のシュレッダー製品を提供。

電気炉、高炉による製鋼法

電気炉による製鋼の場合、原料として用いるのは鉄スクラップです。アーク式と高周波誘導式がありますが、ここでは一般的なアーク式についてご説明します。これは電極と鉄スクラップとの間にアークを飛ばし、その熱で精錬する方式です。アーク式電気炉は蓋のついた鍋のような形で、蓋に黒鉛で出来た太い電極が垂直に差し込まれています。電流を流すと鉄スクラップと電極との間にアークが発生し、そのアーク熱で鉄スクラップは溶けていきます。その際に高温をねらって酸素を吹き込み、反応熱を得ます。この工程を酸化精錬といい、これに続いて酸素や硫黄を取り除く還元精錬を行ないます。還元精錬では、酸化精錬で出来た酸化性のスラグ(製鋼カス)を炉の外へかき出してから粉コークス、石灰などを加え、還元性のスラグを形成させます。
そして、粉コークスと石灰とが高い熱によってカーバイト(炭化カルシウム)となって脱酸、脱硫を行います。さらに粉コークス・フェロシリコンなどを加えながら、鋼を目的の成分に導いていきます。酸化精錬と還元精錬の二段構えの精錬がアーク式電気炉製鋼の特徴です。
高炉による製鋼の場合、高炉(溶鉱炉)で銑鉄をつくる「製鉄(製銑)」と、その銑鉄を転炉で精錬して各種の鋼を作る「製鋼」の二段階になっています。高炉の本体は細長いトックリ型で、鉄鉱石とコークスを交互に投入し約1200℃の熱風を吹き込みます。するとコークスが燃えて炉の温度が上がり、鉄鉱石から鉄分がとり出され、溶けて炉の底にたまります。これを銑鉄といいます。数ヶ所の出銑口から流れ出した銑鉄は、ほとんど溶けたまま貨車に積まれ、けい素やりん、硫黄を除去する溶銑予備処理という工程を経て製鋼工場へと運ばれ、転炉(ずんぐりした壷型)に装入されます。銑鉄は炭素分を多く(4~5%)含んでいるため、硬く、もろいので、これを粘りのある強靭な鋼(はがね)にするには炭素を徹底的に減らし溶銑予備処理でとりきれなかった不純物を除去する必要があります。これが製鋼の目的です。転炉に少量の鉄スクラップを装入し、続けて溶けた銑鉄が入った取鍋から、炉体を傾けた転炉の口に銑鉄を注ぎ込みます。再び、炉体を立てて精錬が開始されます。生石灰などを入れ酸素を吹き込み、不純物を除去した後、溶けた鋼は連続鋳造設備により鋼片(大きな鋼の塊)という半製品に固められスラブ、ブルーム、ビレットという大まかな形を与えられます。その後、加熱され、圧延機で押し伸ばされて線材、厚板、薄板、鋼管など、いろいろな形の鋼材になります。

<出所:一般社団法人 日本鉄鋼連盟発行「鉄ができるまで」/鉄の旅>